逓増定期保険「名義変更プラン」の3つのリスク

この記事をお読みになっている経営者の皆様は、逓増定期保険の名義変更プランに加入をご検討されていらっしゃると思います。

また、もしかしたら既に加入されている方もいらっしゃるかもしれません。

逓増定期保険「名義変更プラン」は、節税効果が非常に高い法人生命保険として、一時期ブームになりました。

この逓増定期保険「名義変更プラン」は、会社から個人への資金移動の際、非常にメリットの大きい商品です

しかし、税務上のリスクの高い商品として市場から消えつつあるのが実情です。

そうは言っても「メリットが大きいなら加入したい」、もしくは「既に加入していて、継続するかを検討したい」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、逓増定期保険「名義変更プラン」の最新情報を徹底調査した筆者が、その3つのリスクをわかりやすくご説明します。

巷では、あまりおすすめできないという意見が多い保険商品ですが、逓増定期保険「名義変更プラン」の3つのリスクを理解した上で加入・継続するか否かを検討しましょう。

逓増定期保険「名義変更プラン」とは?


【そもそも逓増定期保険とは?】

逓増定期保険とは何かについて、既にご存知の方はここの章は読み飛ばしていただいて結構です。

知っているけれど、もう1度確認されたいという方は下記で簡単におさらいしていきます。

まず逓増定期保険とは、死亡保障付きの法人定期保険で、法人向けの生命保険の1種。

「逓増」の言葉通り、保険金額が徐々に上昇するタイプの法人定期保険です。

他の法人定期保険と比べて、早期に解約返戻率が上昇する(解約返戻金のピークが早い)ことが特徴です。

そのため逓増定期保険では、この特徴を活かし、5~10年ほどの短い期間での資産形成が可能です。

このように経営者の死亡保障をしながら、節税と効率的な資産形成ができるとあって、会社経営者の皆様にとってメリットの多い保険商品と言えます。

また、損金算入できる割合は契約形態や保険商品によって、全額損金・1/2損金・1/3損金と大きく分けて3種類。

節税を重視するならば、保険料の全額を損金算入できる、全額損金タイプがおすすめです。

また、貯蓄を重視するのであれば、節税をしながら効率的に退職金等の資金を準備できる1/2損金タイプが良いでしょう。


逓増定期保険には、契約形態や保険種類によって複数のパターンがありますが、今回はその中でも1/2損金タイプの逓増定期保険の名義変更プランについて下記で詳しく解説していきます。

【「名義変更プラン」とは?】

法人が契約者となり加入した逓増定期保険は、契約者を「法人→個人」、「法人→法人」に名義変更することが可能です。

この中でも「法人→個人」の名義変更プランは、法人から個人に資産移転したい経営者に有効な手段です。

しかし、法律のグレーゾーンを突いて納税を免れる 「租税回避」につながる可能性もあるため注意が必要です。

下記では名義変更の仕組みについて、具体例を用いながらご説明します。

【名義変更プランは「低解約払戻金型」を利用する】

よって、逓増定期保険の名義変更プランの一連の流れを簡単にまとめると下記のようになります。

(1) 法人として逓増定期保険「低解約払戻金型」に加入する


逓増定期保険の「低解約払戻金型」とは、加入してから一定期間は解約返戻金が極端に低いが、ある時期を境に解約返戻金が跳ね上がる種類。

法人として契約することで、保険料の1/2を損金処理できるため、節税効果を得ることができます。

(2) 解約返戻率が低い時期に、契約者を法人→個人(会社経営者)に名義変更(有償譲渡)する


  一定期間後の返戻解約金が急上昇する直前に、契約者を法人から個人に名義変更。

この場合、個人は解約返戻金相当額で保険の権利を買い取ることができます。

「低解約払戻金型」では、加入してから一定期間は解約返戻率が極端に低いため、個人でも少額で権利取得することが可能です。

そのため法人としては、保険料は1/2資産計上された金額(保険料支払い時に資産として積み立てた金額)と譲渡価格との差額を損金計上できるため、法人税を減らすことが可能。

(3) 返戻率が急上昇した段階で解約、解約返戻金を個人(会社経営者)が受け取る


法人→個人への譲渡後に、個人が1年分の保険料を支払った段階で解約し、個人が解約返戻金を受け取ります。

解約するタイミングを解約金が急上昇する時期に合わせることで、個人としては、保険を少額で買い取った後、多額の解約返戻金を取得することができます。

また、個人が取得した解約返戻金は税法上一時所得扱いとなります。

一時所得は、解約返戻金から50万円を差し引いた金額の1/2しか課税対象とならないため、法人が個人に報酬として支払った場合より税負担が減ります(報酬の場合は全額課税対象)。

このように税負担を減らすことで、法人から個人に効率良く資産を移すことができるという仕組みです。

<イメージ>
加入年数 返戻率 タイミング
1年目 5% (1)加入(法人)
2年目 10% ↓4年間保険料を支払う
3年目 15% ↓
4年目 20% (2)名義変更(法人→個人)
5年目 95% (3)解約(個人)

ここまで、逓増定期保険の名義変更プランの概要、仕組みについてお話しました。

以上の特徴により、会社から個人宛に資金移動をされたい会社経営者の皆様にとっては、非常にメリットの多いプランと言えます。

しかし、忘れてはならないのは、このプランには税法上の大きなリスクがあるということです。

名義変更プランは否認されるリスクがある?



実際に、低解約返戻金型)逓増定期保険の名義変更を利用した節税方法について争われた裁判が過去にありました。

その事件について、札幌高裁は平成29年6月、法人負担の保険料を名義変更後の個人の一時所得から差し引くことを認めない判決を出しました。

下記に判決内容を1部抜粋し、ご紹介します。

“札幌高裁は、保険金収入に対する一時所得の計算上控除対象となる支出金額の範囲に、保険契約の名義変更前の前受取人による負担分までは認めない判断を下した。

今回問題となった保険商品は、本誌でも取り上げたことのある、リスクを伴う節税商品「低解約返戻金型の生命保険」。

契約開始から一定期間経過後に返戻率が大幅に上昇するのが特長の商品で、本件では控訴人(医療法人理事長)が受領した保険金の一時金に関して、名義変更前の受取人(医療法人)の保険料負担分も控除して一時所得の計算を行っていた。”

※税務研究会 週刊_週刊税務通信より

平成30年に変更になったこととは?


また、平成30年1月1日以降に行われた生命保険の契約者変更について、支払い調書に記載することが義務付けられました。

生命保険を解約して解約返戻金を受取ったり、生命保険金や個人年金を受け取った際に、支払調書が生命保険会社から税務署へ提出されていましたが、提出基準と記載内容が、平成30年1月1日より変更となります。

記載事項としては以下3点に変更。

  • その変更前の契約者の氏名、名称
  • 現契約者が払い込んだ保険料額
  • 契約者の変更回数

支払調書とは、特定の支払いをした事業者が、税務署に提出する書類のこと。

支払いを受けた者がきちんと申告しているかどうかを税務署が照らし合わせるために利用されます。

この税制改正からわかることは、税務署が生命保険の名義変更を利用しての節税について、注視しているということです。

参考:https://www.shiho-tax.com/payment-papers-for-life-insurance/


今後も税制改正がある可能性があることを考えると、やはり逓増定期保険の名義変更プランはリスクが高い商品と言わざるを得ません。


ここまでで既にリスクが高いことはお伝えしましたが、ここでもう一度、逓増定期保険のリスクについてまとめておきます。

逓増定期保険の3つのリスク


  1. 課税逃れ目的「租税回避」として否認されるリスクがある
  2. 保険料払い込み期間中に、保険料の1/2以上の営業利益を出し続ける必要がある
  3. 今後税制改正により、節税のメリットが減るというリスクがある

このように逓増定期保険の名義変更プランには、税務上の大きなリスクがあります。

また、法人から個人への名義変更を行ったことに対して、税務署に理由を問われる可能性もあります。

なぜかというと、法人からしてみれば、解約返戻金が低い段階で譲渡することは、明らかに不利な取引であるためです。税務署からしてみると、「なぜ損することがわかっていて、譲渡したのか?」ということになります。

否認されないためには、逓増定期保険の譲渡に対して正当な理由があることが重要になります。

では、この場合「理由」はなんと答えるのがいいのでしょうか?

今のところ100%合理的と言い切れる理由というのはありません。

強いて言うならば、「今まで会社に貢献してきた功労金」というのが無難な答えになるでしょうか。


まとめ

最後にもう一度も申し上げますが、逓増定期保険の名義変更プランは税務上のリスクが高い保険です。

今回の平成30年の税制改正から、生命保険を利用した節税に関しては、今後も規制が厳しくなっていく兆候がみられます。

もし現在、逓増定期保険に加入をご検討の方がいらっしゃれば、リスクを十分に理解していただき、より安全な方法を検討していただきたいものです。

また、既に逓増定期保険の名義変更プランに加入されている方は、加入先の保険会社や信頼できるFPの方に、今後の方向性について一度ご相談なさることをおすすめします。

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